立ち上る湯気から香る、醤油と酢の温かい香り。
麺が見えないくらい、豪快に覆っている照り付いた餡と彩り良い具材たち。
噛むほどに旨味を増していく、味わい深い麺。



その集合体を「あんかけ焼きそば」と呼ぶ。読者の皆さんも馴染み深いメニューだろう。



幼い頃、祖父母と一緒に外食するときは何故かあんかけ焼きそばを食べることが多かった。あんかけ焼きそばを想像するだけで祖父母との懐かしい思い出が蘇るのと同時に、五感が覚えている「うまい」を呼び起こす。食欲が無性に湧いてくる。



「夕方とかお腹が空いているタイミングに『あんかけ焼きそば、食いたくないか?』ってLINEが来たら、みんな食べたくなるんじゃない?」と、企画会議で発言した編集部員の言葉をきっかけに、イオンモール札幌発寒には3店舗も中華料理店があることに気付いた。ただ、食べ比べたことないよね、という話題から「満龍」「王華」「暖龍」の中華料理店に取材を申し込み、わがままに食べ比べさせていただいた。



・3店舗食べ比べ


-満龍


満龍_外観札幌ラーメンでおなじみのお店。3階フードコート内に位置。



満龍の1番人気は味噌ラーメンであるが、あんかけ焼きそばもBEST3に入る人気メニュー。サイズも選べて、ミニ・普通・ジャンボの3サイズがある。普通サイズに限れば、土日で30食は注文が入るという。男性はジャンボサイズ、ご年配の方はミニサイズでの注文が多いようだが、今のところいずれにも該当しない成人女性の私は普通サイズでご用意いただいた。



あんかけ焼きそば(サイズ:普通)あんかけ焼きそば(サイズ:普通)/850円(税込)



ボリューミーな餡と具材、調味料が視覚だけですでにおいしい。お皿の面積の9割近くたっぷりと盛り付けられ、お店の気風の良さが伝わってくる。醤油をベースにした味付けで、具材は白菜、タケノコ、ニンジン、きくらげ、絹さや、豚バラ、エビ、イカの8種類。


なんと!麺は店舗で生麺から調理し、具材はすべて下ごしらえから行っているそう。豪快な見た目と、丁寧に調理される素材から、おいしさを追求してお客さまに提供したいという気持ちがビシバシ伝わってくる。さっそくいただくことにする。


レビュー:香り高く、丁寧さが醸し出す味わいが五感を通じて味わえる!


<レビュー:香り高く、丁寧さが醸し出す味わいが五感を通じて味わえる!>
・麺の香ばしさ:★★★★★
・野菜の風味:★★★★★
・お皿の見え具合:★★(それだけボリューミー!)



一口食べた瞬間から焼いた麺の香ばしさと餡・素材からジュワッと広がる味わいが、私のあんかけ焼きそばメモリーを呼び起こし「これだよ、これ!」と脳内の私が叫ぶ。あぁ、おいしい・・・。


飲み込んだ後も、口の中にまろやかな自然な甘みが余韻のように響く。シャキシャキの野菜はよく噛んでいくと素材本来の優しい風味がじわ〜〜〜りと口の中に広がり、ゴロゴロに見えるものの、丁寧に処理された素材は口に運びやすいサイズ感に仕上げられている。



何より、パリッとした麺の焼き目の食感が、しっとりした食感の中に噛む喜びをプラスしてくれる。噛んでいるだけで幸せ。


すべてのお客さまにスープを付けてくれるサービスも

すべてのお客さまにスープを付けてくれるサービスも。口当たり優しく雑味のないスープは、餡で満たされつつある口内をリセットしてくれるとともに、からしや酢の投入による「味変」を引き立てる。あんかけ焼きそばとの味のバランスが絶妙で絶品!




-王華(おぉーか)


王華_外観本格炒飯・焼きそば専門店。3階フード―コート内に位置。



創業から16年ずっと愛されてきた、五目あんかけ焼きそばとカニ玉チャーハンが人気2TOPで、この2つだけで店舗売上の4割を占める。五目あんかけ焼きそば単体で言えば、土日で50~60食は注文が入るそう。カニ玉チャーハンとセットでお得に食べるという選択肢もある。カロリーってなんの話でしたっけ?ととぼけて注文してしまうそれだ。食べる幸せを存分に味わう1日があっても良いと、私は思う。


五目あんかけ焼きそば五目あんかけ焼きそば/715円(税込)



「飽きない味!」と特徴を餡と同じくらいたっぷりな自信で言い切る店長。


美味しさのカギを握る加熱時間は、中華鍋で約20秒程。秒単位で味が変わってしまうので、最高の味に仕上がるタイミングを目を離さずに見極めているのだとか。秒単位で毎回仕上げているのもすごいが、最高においしく仕上がるタイミングを秒刻みで研究した店長の熱量がきっと味わいにプラスされているはずだ。



なお、具材は鶏肉、タケノコ、ニンジン、きくらげ、小松菜、白菜、エビ、イカの8種類が入っている。まだまだ食べられるぞ。いただきます。



単位で調理される味わいは、お肉のジューシーさで満足感いっぱい!


<レビュー:秒単位で調理される味わいは、お肉のジューシーさで満足感いっぱい!>
・味の濃厚さ:★★★★★
・肉の柔らかさ:★★★★★
・店長の情熱:★★★★★...... (突き抜けています、もちろん良い意味で。)



口に運んだ瞬間、ガツンとした醤油の力強い旨みが口いっぱいに広がる。程良くとろみのついた餡に絡んだ柔らかい麺はスルスルと箸が進む。後からオイスターソースの濃厚なコクと深みがじわりと押し寄せる。柔らかさと弾力を両立した鶏肉と、味わいは存在感を放ちながらも、キレのある餡との相性は抜群だ。



満龍とはまた違った王道さがあり、塩気と旨味の効いた味わいを楽しみたい方は王道を日によって食べ比べても良いだろうし、なんならフードコート内でハシゴしたって良いと思う。それくらい「もっと食べたい!」を掻き立てる味わいであった。



-暖龍


暖龍_外観王華と系列の本格中華料理レストラン。1階のレストラン街の中に位置。



1番人気メニューの五目あんかけ焼きそばは、価格とボリュームに相違はあるものの系列店の王華と味付けや調理方法が同じであることから、今回は「えびチリあんかけ焼きそば」をご注文。こちらもBEST3に入る人気メニューで、特に男性やお子さんに人気。そもそも、「おいしいもの+おいしいもの=もっとおいしいもの」の公式を当てはめると、えびチリにあんかけ焼きそばって最強と呼べるメニュー名だと思う。麺は茹で麺・揚げ麺のどちらかを選べるが、今回は茹で麺でお作りいただいた。



エビチリあんかけ焼きそばエビチリあんかけ焼きそば/1,122円(税込)



正直なことを言うと、もっと鮮やかなオレンジ色を想像していたが、エビチリと言うより麻婆豆腐の見た目に近い。後述するが、これには理由がある。ただ、目の前に置かれた瞬間から、スパイシーな香りが漂い、しっかりエビチリの存在が確認出来た。



具材は卵、ネギ、エビのみ。先に紹介した2店舗と比較して具材はシンプルだが、エビチリというちょっとした贅沢を鑑みれば、あんかけ焼きそばの土俵で戦うポテンシャルは十二分にある。



また、色合いの正体は「醤油ベース」だからであるそうだ。じゃあエビチリじゃないじゃん!なんて声も聞こえてきそうだが、店長曰く一般的に日本人が食べるエビチリとは一味違うコクのある味付けで、唐辛子や豆板醤、ラー油などで辛みを効かせているのだという。



メニュー名だけでもうおいしいので、いただくことにしよう。



「おいしいもの+おいしいもの=もっとおいしいもの」は本当だった!


<レビュー:「おいしいもの+おいしいもの=もっとおいしいもの」は本当だった!>
・辛さレベル:★★★
・変わりダネ度:★★★★★
・エビチリ感:★★★(醤油ベースがエビチリ感と絶妙にマッチ!)



エビチリ餡にしっかり麺を絡ませて一口頬張ると、心地よい辛さが舌を包んだ。噛むごとに辛さは程よく広がり、香辛料が醸し出す旨味とハイタッチ。大海原では小さく見えるエビも、餡の海の上ではどっしり構えている。そんなエビを口に運ぶ。期待を裏切らないぷりぷり感が食感に音を添えて食を楽しませてくれるではないか・・・!口に残る辛さがエビの甘みをより一層引き立てる。食べた後も唇がピリピリとした感覚が残り、辛党にはたまらない刺激的な一品だ。



ちなみに辛さ控えめ・増しなどの要望があれば、注文時に伝えると調節してもらえるようなので、辛いのが苦手という方はまずは控えめで頼むことをおすすめする。



・プロに聞く、自宅であんかけ焼きそばを美味しく作るコツ


せっかくプロに集まってもらったので、自宅であんかけ焼きそばを美味しく作るコツを聞いてみたので紹介する。



満龍・主任の石井さん休日には時々ご自宅でもあんかけ焼きそばを作るという満龍・主任の石井さん。



▼ポイント


・味は濃い目に


・餡は固めに



「お店と同じように家で再現するのは難しいですが、とろみ付けの際に片栗粉を多く使うことで味が薄くなりがちなので、濃いめで味付けをするのがポイントです。後は、食べているうちに水っぽくならないように餡を固めに調整することも意識するとより美味しく仕上がります。」



暖龍・店長の及川さん「あんかけ焼きそばは火力・時間が命!」と語る暖龍・店長の及川さん



▼ポイント


・餡は沸かしすぎない


・野菜は炒めすぎない



「色が飛んだり野菜の水分が出すぎて味が薄くなったりするので、餡は沸かしすぎない・野菜は炒めすぎないことが大切です。あとは火力がすごく重要なので中華レンジ(※)で作るのが理想ですが、家でとなるとあまり現実的ではないと思います・・・。」



中華レンジ※中華レンジとは恐らく火が出ているこれのこと。確かに家には置けそうもない。



まとめると、「濃いめに味付け」「餡を固めに調整」「沸かしすぎない」「野菜は炒めすぎない」ことが美味しく作るコツだそうだ。お2人の話に共通していたのは、お店で作るのと同じように家で再現するのはなかなかハードルが高いということ。ご家庭で作る際は先述の4点を是非意識して作ってみてほしいが、本格的に味わうならやはり直接お店に足を運ぶのが1である。



実際に食べ比べてみると、それぞれのお店の味やこだわりの違いがはっきりとわかる結果となった。取材時に食べきれなかった分は取材班で分け合ってお持ち帰りさせていただき、その日のうちにペロリと完食した。今回取材にご協力いただいた3店舗の皆さま、本当に美味しかったです。ごちそうさまでした!



読者のみなさんはどのお店のあんかけ焼きそばが1番お口に合いそうだっただろうか。お気に入りのお店一択!というのもいいが、その日の気分によって選ぶというのもまた食べる楽しみを一層盛り上げてくれるに違いない。




【札幌ラーメン満龍 イオン発寒店】
住所:北海道札幌市西区発寒8条12-1 イオンモール札幌発寒3Fフードコート
電話番号:011-668-3203
営業時間:10:00~21:00(L.O. 20:30)



【王華 イオンモール札幌発寒店】
住所:北海道札幌市西区発寒8条12-1 イオンモール札幌発寒3Fフードコート
電話番号:011-669-5495
営業時間:9:00~21:00(L.O. 20:30)
※9:00~10:00の間はドリンクのみ



【暖龍 イオンモール札幌発寒店】
住所:北海道札幌市西区発寒8条12-1 イオンモール札幌発寒1Fレストラン街
電話番号:011-661-6000
営業時間:11:00~21:00(L.O. 20:30)